令和6年(2024年)11月30日(土)、立石有作弁護士をお迎えし、秋の特別講演会「知れば知るほど裁判員裁判」を行いました。
以下、参加者の感想です。
よく耳にする「国民感覚を司法制度に反映させる」という制度発足の目的は、理解できるようなできないような感じがしていました。本日、具体的なお話をうかがって、国民の権利を守るための法廷手続きが国民感覚とのずれを生んでいることに気づきました。
裁判員制度導入から10年以上がたった現在、捜査・裁判手続きや法曹の意識が確実に変化していることがわかりました。改革の意義を感じた一方、見えてきた課題についてお話から、「裁く」側になった人間の心理には共通するものがあることや情報化社会の負の側面も強く感じ、改めて、権力を抑制し人権を守る法の重要性を感じました。
国民の人権を守るしくみを十分に機能させるには、それを運用する警察や法曹三者は勿論のこと、私たち一般国民も、公正さを求める気持ちと客観的・理性的に物事をみる力が必要です。
ご講演を通じて、本学会の社会的意義があることが再確認できました。
大変有意義な時間をありがとうございました。

第64回全国矯正展が令和6年(2024年)11月23日(土)・11月24日(日)に東京国際フォーラムで開催されましたが、日本法育学会では、11月23日(土)に、全国矯正展見学会を行いました。
会場に着いたとき、ちょうど、刑務所のアイドルとして知られるPaix2(ぺぺ)のコンサートが舞台で行われていました。参加者の中には、コンサートを聴いた者もおり、歌だけでなく、刑務所での活動をするようになった理由や、各地の刑務所の特徴、出身地の鳥取のことなど、他では聴けない話を聴いてきたそうです。
また、法務省や警視庁の車両を見入っていた学生もいました。こうした車両をじっくり見て触れる機会はなかなかありませんし、その他にも、刑務作業体験などもありましたので、刑務官や警察官などの貴重な職業体験になったようです。
加えて、参加者の中には、監獄和牛弁当や横浜刑務所パスタを昼食としていた者もいました。横浜刑務所は製麺で有名ですが、製麺方法の紹介パネルもありました。
そのほか、来年度施行される拘禁刑の紹介や、刑の執行段階等における被害者等の心情等の聴取・伝達制度の紹介などのパネルもありました。一部の参加者が関心を持ったことがらとして、刑務所等が災害時に避難所となるなど、被災者支援の一部を担っていることでした。一部の参加者は既に刑務所見学の際にこのことは知っていたのですが、見学会参加自体が初めての者にとっては意外に思われたようです。
日本法育学会では、今後もこうした見学会などを通じて、社会を知る活動をしてまいります。
日本法育学会は、2024年10月25日、千葉地方裁判所で裁判傍聴をしました。
当日は、裁判員裁判や、全国報道される有名事件の民事裁判もありましたが、参加者の中には裁判傍聴自体が初めてという学生もいましたので、裁判手続きを一通り見ることができる新件の簡単な刑事事件を2件傍聴しました。
1 過失運転致傷事件
被告人は、建材業を営み、建材を運搬する大型貨物自動車を運転していましたが、運転中に数秒間伝票を確認していたところ、見通しの良い交差点を赤信号に気付かないまま直進したために、交差点を右折した乗用車と衝突し、乗用車の運転手に全治1か月、同乗していた乗用車の運転手の子供に全治2週間の怪我を負わせました。
被告人は、見た感じ普通の人、というよりむしろ真面目に仕事に取り組む人のように見えました。納期や納品場所など、仕事の伝票を気にしていたところにそのことは表れていたと思います。
ただ、やはり大型貨物自動車という、時として人命を奪いかねないものを運転する場合には、運転に集中しなければなりません。事故の結果から見れば、被害者の「殺人未遂みたいなものですよね」という感情には、同情できるものがあります。
被告人は、事件内容については争っていません。また、今後運転できないことになれば、被告人自身の仕事が成り立たなくなってしまいます。
検察官の求刑は禁錮10月で、弁護人は執行猶予を求めています。来月予定される判決はどうなるでしょうか。
参加者の中には、「ながらスマホ」が癖になっている方がおり、交通事故に限らず危険は日常に潜んでいることを思い知らされた事件でした。
2 出入国管理及び難民認定法違反事件
被告人は、もともと留学生として日本に入国した者ですが、留学ビザが切れた後も、コロナ禍で本国に帰る直行便が飛んでいなかったこともあり、そのまま日本にとどまり、弁当盛り付けや、荷物仕分け、建物解体などの仕事をしていました。
事件としては極めて単純で、被告人も事実関係を争っておらず、反省していました。検察の求刑が懲役1年であるのに対し、弁護人は執行猶予を求めていましたが、数分の休憩時間ののち、懲役1年(うち未決勾留日数20日算入)、執行猶予3年の判決が出ました。
被告人は若かったので、参加した学生の中には、「大学にいる留学生と何が違うのか」と思った者もいました。被告人は、数ある国の中から日本を選んで留学をしたところ、コロナ禍のために帰れなくなったため、日本にとどまって、ビザ更新などもしなかったために、入管法違反になってしまいました。実際、大学にいる留学生とは有効なビザを持っているかどうかしか違いはなく、学生が感じた思いは全くそのとおりです。
なお、この裁判には法廷通訳人がついていました。参加者の中には、先日の全国研究大会の模擬裁判で裁判員役をした学生もいましたが、大会の模擬裁判で法廷通訳人というものを知った直後に実際の法廷通訳人の仕事を見ることができたことに、裁判傍聴の成果を感じたようです。
日本法育学会は、2024年9月18日、東京地方裁判所で裁判傍聴をしました。
東京地方裁判所は、夏休み明けということもあってか開廷件数が多く、83件。傍聴者が溢れていました。
そのうち4件を傍聴することができました。
1.危険運転致傷罪
被告人(50代の女性)が、酒を飲んで自動車を運転し、通行人にケガを負わせた初犯事件でした。
2.常習累犯窃盗罪(盗犯等防止法)
被告人(60代男性)が、刑務所出所後1ヶ月足らずでコンビニで万引きをして逮捕された事件です。2年の実刑判決。
3.窃盗罪
被告人(20代男性)は、特殊詐欺事件の「出し子」として銀行ATMから140万円を引き出し報酬を得ていました。防犯カメラ映像により逮捕された事件で、判決は来月です。
4.不同意性交等罪(刑法177条3項)
被告人(20~30代の男性)は、新宿歌舞伎町で被害者2人をラブホに連れて行き、14歳であると知りながら同意の上性交。衝立て越しに被害者が証言するも状況がやや不明でした。
いつも感じることですが、犯罪者は特別な顔や態度をしているわけではありません。道ですれ違う普通の人です。
自分も何かのきっかけで処罰行為に及んでしまう可能性があることを意識して生活したいですね。
傍聴は、いつでも誰でもできます。是非、裁判所にお出かけ下さい。
ご連絡いただけましたら、法育学会の弁護士はじめメンバーがご案内、解説いたします。

日本法育学会は、前日の明治大学博物館見学会に続き、令和6年(2024年)6月23日(日)に、初代最高裁判所長官三淵忠彦の別荘で、三淵嘉子ゆかりの地でもある小田原の三淵邸(甘柑荘)を見学しました。
三淵邸は簡素な家でしたが、朝ドラ放映中で、三淵嘉子に注目が集まっていましたので、多くの見学者が訪れていました。既に我々は明治大学博物館の特別展で三淵嘉子のことを勉強したところですが、こちらの三淵邸でも三淵嘉子についての展示がされていました。
また、三淵邸はもともと初代最高裁判所長官の三淵忠彦の別荘です。三淵忠彦についての展示やビデオの放映がありましたので、三淵嘉子だけでなく三淵忠彦について知ることができたのは、大きな成果だといえます。
なお、三淵邸は、建築関係では注目されている建物のようで、三淵邸の間取りや工法などに着目して見学している参加者もいました。
三淵邸近辺にはいくつか有名な邸宅跡がありますので、見学会当日は、三淵邸のほかにもいくつか見学をしてみました。
古稀庵(山縣有朋邸跡)は、現在、保険会社の社員寮となっていますが、庭園は日曜限定で開放されています。
古稀庵の庭園は、水が流れているそばを回遊して散策します。あたかも、渓流脇の山道を山登りしている気分になります。山縣有朋のことを知るキーワードは「水」ですが、そのことは次に見学した皆春荘で判明することになりました。
皆春荘(清浦奎吾邸跡)は、古稀庵から急な坂を登った先にありました。山縣有朋が譲り受けて、古稀庵の別邸となっていたそうです。
皆春荘では、ボランティアの方が、いろいろ説明してくださいました。古稀庵・皆春荘周辺は、山縣有朋の私設水道が整備されていたのですが、それは公設水道だと毒を盛られるかもしれないと、山縣有朋が考えたからと言われているようです。
現在、我々は何気なく公設の水道を利用していますが、近時、有機フッ素化合物(PFAS)が、地下水や河川に流れ出し、水道水にも混入するという問題を抱えています。一方で、水道施設の老朽化や、水資源の枯渇という問題もあります。水道インフラのあり方を考えさせられることになりました。
最後に、松永記念館を見学しました。松永記念館は、電力業界で活躍した実業家である松永安左エ門が、自身が収集した古美術を公開するために自宅敷地内に建てたものです。松永安左エ門のことを知るキーワードは「電力」ですが、戦争・平和と電力、産業と電力、競争と電力と、電力インフラのあり方を考えさせられることになりました。現代においては、原子力発電事故のこと、電力需給ひっ迫のこと、再生可能エネルギーのことなどが問題となりますが、松永安左エ門であればどう解決しただろうかと考えさせられることになりました。
なお、松永記念館はもともと財団が運営していたものの、運営が苦しくなったため、小田原市に寄付等をして、今は小田原市が運営しています。小田原には有名な邸宅跡が多数ありますが、中には管理・運営ができなくなっているものがあります。こうした遺産を後世に残していくことが課題になりそうです。
また、三淵邸では司法サービス、古稀庵と皆春荘では水道インフラ、松永記念館では電力インフラについて考えさせられることになりました。先人たちの遺したものを、我々はよりよくして後世につないでいく必要があると感じました。

日本法育学会は、朝ドラで話題となっている日本初の女性弁護士・女性裁判所長である三淵嘉子について学習するために、令和6年(2024年)6月22日(土)に、明治大学博物館を見学しました。
明治大学博物館では、「虎に翼」展、「女性法曹養成機関のパイオニア」展の2つの特別展を行っていました。
「虎に翼」展は、主人公の家族関係や大学での友人関係、主人公に影響を与えた人たちなどが図に描かれていたりして、朝ドラを毎日見ている方が改めて楽しめる内容になっていました。また、朝ドラに出てくる大学の札や出演者の着た服、朝ドラの風景を模した展示などもあり、朝ドラを見ていない方や、法学部出身でない方でも、当時の大学の様子を想像できる展示になっていました。
「女性法曹養成機関のパイオニア」展は、明治大学法学部や女子部のこと、三淵嘉子のことについての展示がありました。見学会参加者の中には、三淵嘉子の論文の展示に関心を持った方もいました。
なお、三淵嘉子が教わった穂積重遠は、「家族法の父」と言われています。穂積重遠の父は、民法起草者の一人である穂積陳重です。三淵嘉子を知ることは、日本法制史の学習につながります。
さらに穂積重遠は、渋沢栄一の孫です。4月に日本銀行貨幣博物館を見学したばかりですが、点と点が思わぬところでつながったことに、見学会参加者は驚いたところです。

令和6年5月8日
弁護士 船山 泰範
幼いときに暖かい家庭を持ち得なかった者は、大人になったとき、ひたすらその飢えを充たそうとする傾向がある。只それは、自分が相手に求めるだけでなく、本来は2人で共に築いていくものなのである。しかしながら、彼はその方法を学んだことがない。父親から遊んでもらったことのない子が、自分が父親になったとき、どう子どもと遊んでよいのかわからないのも同類である。そのため、結婚当初は同じ目標を共有できると思っていた2人の間に様々な食い違いが生じてしまう。そして、その原因の大きな部分を自らが作っているのに本人は気付かない。
このような幸薄い者が、相手方の我慢できる一線を越える行為をしたとき、社会はそれを犯罪として処罰するのである。むろん、相手方の心の傷をはじめとして多方面の被害を考えるとき、今までそれが犯罪とされてこなかったことこそ理不尽と言うしかない。「法は家庭に入らず」という法格言は、子への虐待が浮上した時点で潰れたと言えるが、殺人事件の半数以上が家族とそれに類する者でなされるという事実は、人間とはいかなる存在なのかという問題を問いかける。
それにしても、子ども時代に暖かい家庭の味を味わえず疎外感に苛まれてきた者が、大人になって、今度は社会全体から刑罰によって排除されるということは、随分と割に合わないことではなかろうか。貧しい者が食べ物を万引きするという問題にも同じ矛盾が含まれている。
何のために自分は生まれてきたのだろうと声をあげたくなるのを、誰が非難できよう。
船山弁護士の報告書

日本法育学会は、令和6年(2024年)4月13日(土)に、日本銀行金融研究所貨幣博物館見学会を行いました。
貨幣の歴史を学ぶことにより、金融法や商取引法の理解につなげることが目的でしたが、実際には、それらにとどまらない学びをすることができました。
まず、金融法との関連では、おりしも日本銀行がゼロ金利政策解除を解除した直後でしたが、その政策決定が私たちの生活にどのような影響を及ぼすかを考えることができました。また、貨幣は人々の信用の下で成り立つものですが、間もなく発行される新紙幣に様々な偽造対策が盛り込まれていることや、過去の貨幣や藩札などにも様々な工夫がなされていたことなどを学ぶことができました。
つぎに、商取引法との関連では、かつてツケ払いが一般的であったところ、江戸時代に「げんきんかけねなし」という現在は一般的に行われている現金取引が始まったとする展示について、参加者からは、「クレジット取引はツケ払いだから、むしろ昔に戻っていないか」という話が出てきたりしました。また、手形や為替の展示に関連して、取引の電子化に伴い近いうちに有価証券が廃止されるという話題も参加者から出てきました。
見学会参加者の話題は、これら金融法や商取引法にとどまりませんでした。
1億円がどれぐらい重いのか体験した参加者は、10億円以上の損失を出した違法賭博事件について、「違法賭博での損失はどれだけ重いのか」という感想を述べていました。
また、多額のお金を使おうとした者がいた場合には通報しなければならないとする幕府からのお達しによって、蔵から盗んだお金を使おうとした盗人が捕まったという展示を見た参加者は、「現代の資金洗浄(マネーロンダリング)対策などにつながる話だ」という感想を述べていました。

貨幣博物館の展示は、一見すると法学との関連がないようにも思えますが、実際に見学してみて、貨幣・金融と法との関連を様々な視点から学ぶことができたのは、大きな成果であったといえます。

日本法育学会は、令和6年(2024年)3月19日(火)に、ポリスミュージアム(警察博物館)見学会を行いました。
ポリスミュージアムは、6階建てで、各階ごとにテーマがわかりやすく設定されており、また、展示内容は非常に充実したものになっていました。
パトカーなどの実物が展示されており、白バイとヘリコプターは乗ってみることができますので、幼児でも楽しむことができます。また、110番通報体験、犯罪捜査体験、交番体験、制服紹介、警察犬紹介など、小学校の児童や、中学・高校の生徒が楽しく学べるものがありました。そのほか、歴史展示は、大学生や研究者が、警視庁の歴史や事件の歴史などを詳しく知ることができるものになっていました。パンフレットも、各世代に合わせたものが用意されていました。
このようにポリスミュージアムは、各世代により違った学び方が出来ますが、加えて、日本橋と銀座との間の京橋と、非常に立地がよいこともありますので、近いうちに再度訪れて、より深く学びたいと思いました。
日本法育学会事務局
〒270-1196
千葉県我孫子市久寺家451
中央学院大学法学部
大久保輝研究室内
MAIL
info@nihon-houiku.jp
ゆうちょ銀行口座
口座記号番号 00160-8-587494
加入者名 日本法育学会