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          The Legal Mind Education Of Japan

人間性を育む法育、日本法育学会。

日本法育学会は、模擬裁判員裁判を中心としたアクティブ・ラーニング、社会を知る学習としての裁判傍聴、施設参観、知識を深めるための学習会、講演会などの教育活動を行っています。

 第7回全国研究大会topics


第7回全国研究大会 ご報告

 令和6年(2024年)10月14日(月)日本法育学会と鹿児島司法精神医学研究会と志學館大学との合同研究大会を実施いたしました。
 鹿児島大学医学部副医学部長の赤崎安昭先生に全面的協力を賜り、志學館大学のたくさんの先生方のご協力をいただき、桜島を見渡す素晴らしい40周年記念講堂で開催することができました。

 今回の模擬裁判員裁判の題材は、2015年9月に実際にあった「熊谷6人殺害事件」です。被告人(ペルー人男性)の責任能力の有無が問われた事件です。既に結審しておりますが、新たに赤崎先生が鑑定書を作成してくださり、それに基づいて裁判員裁判と評議・評決を行いました。被告人の言動から、犯行当時心神喪失状態であったか、心神耗弱状態であったか、通常の判断能力があったかにより、有罪・無罪が分かれ、さらに、刑罰が大きく異なります。
 最初に、赤崎先生に精神医学、精神鑑定についてご講義いただき、その後、会場から任意に参加された老若男女の裁判員による裁判員裁判が始まります。証人役である赤崎先生による緻密な鑑定書の内容から、裁判員の思考判断が大きく揺れ動いている様子が伝わってきました。
 裁判員の評決は、実際の判決とは異なり、心神喪失と判断され「無罪」となりました。被害者にすればとても是認することはできない評決ですが、刑法39条1項により責任能力がないと判断した結果です。刑法39条1項は、行為の段階で、良し悪しがわからなかったり、自分を制御することができないときは責任を問わないということです。さらに、刑罰の意味がわからず効果も期待できない人に刑罰を科すよりも、精神科病院などに強制的に入院させて治療に専念することの方が犯罪を減らす、という観点からできた心神喪失医療観察法という法律が用いられます。
 精神鑑定は非常に緻密で慎重に行われてアセスメントされ、鑑定書が作成されていました。そして、精神鑑定人はプロです。本当に統合失調症なのか詐病なのかはすぐに見抜くことができるそうです。被告人は、以前から「自分を殺そうとしている」人がいるという幻聴や幻覚がありました。
 精神鑑定書や証拠・証言に基づき、最終的に判断するのは裁判員と裁判官です。感情に流されることなく、事件の背景を知り、事実を見極めた上で、自分の頭で考え、結論を出すことが重要です。
 人生は、白とも黒ともつけがたいことに溢れています。決断することに迷い苦しむ機会がたくさんあることでしょう。模擬裁判員裁判は、事件という「素材」をもとに裁判という「形式」を用いて、自分の頭で精いっぱい考え、悩むこむことでご自分を成長させる訓練の場となるのです。そして大事なことは、他者の意見を聞いて、自分の見解を変えることがあってもよいということです。今回の評議の場面でも、最後まで迷っている様子が見られました。
 鹿児島大会は、精神鑑定の難しさとその重要性を強く認識した貴重な時間となりました。また、模擬裁判員裁判は、参加者の主体的思考を大きく拡張する機会になることも再確認した次第です。 
 赤崎先生はじめご協力いただきました先生方、参加された皆様に心より感謝申し上げます。

  令和6年10月25日
                                        日本法育学会
                                        理事長  平野 節子

これまでの理事長からのお知らせ



活動報告report

 
活動報告写真  日本法育学会は、2024年10月25日、千葉地方裁判所で裁判傍聴をしました。
 当日は、裁判員裁判や、全国報道される有名事件の民事裁判もありましたが、参加者の中には裁判傍聴自体が初めてという学生もいましたので、裁判手続きを一通り見ることができる新件の簡単な刑事事件を2件傍聴しました。

1 過失運転致傷事件
 被告人は、建材業を営み、建材を運搬する大型貨物自動車を運転していましたが、運転中に数秒間伝票を確認していたところ、見通しの良い交差点を赤信号に気付かないまま直進したために、交差点を右折した乗用車と衝突し、乗用車の運転手に全治1か月、同乗していた乗用車の運転手の子供に全治2週間の怪我を負わせました。
 被告人は、見た感じ普通の人、というよりむしろ真面目に仕事に取り組む人のように見えました。納期や納品場所など、仕事の伝票を気にしていたところにそのことは表れていたと思います。
 ただ、やはり大型貨物自動車という、時として人命を奪いかねないものを運転する場合には、運転に集中しなければなりません。事故の結果から見れば、被害者の「殺人未遂みたいなものですよね」という感情には、同情できるものがあります。
 被告人は、事件内容については争っていません。また、今後運転できないことになれば、被告人自身の仕事が成り立たなくなってしまいます。
 検察官の求刑は禁錮10月で、弁護人は執行猶予を求めています。来月予定される判決はどうなるでしょうか。
 参加者の中には、「ながらスマホ」が癖になっている方がおり、交通事故に限らず危険は日常に潜んでいることを思い知らされた事件でした。

2 出入国管理及び難民認定法違反事件
 被告人は、もともと留学生として日本に入国した者ですが、留学ビザが切れた後も、コロナ禍で本国に帰る直行便が飛んでいなかったこともあり、そのまま日本にとどまり、弁当盛り付けや、荷物仕分け、建物解体などの仕事をしていました。
 事件としては極めて単純で、被告人も事実関係を争っておらず、反省していました。検察の求刑が懲役1年であるのに対し、弁護人は執行猶予を求めていましたが、数分の休憩時間ののち、懲役1年(うち未決勾留日数20日算入)、執行猶予3年の判決が出ました。
 被告人は若かったので、参加した学生の中には、「大学にいる留学生と何が違うのか」と思った者もいました。被告人は、数ある国の中から日本を選んで留学をしたところ、コロナ禍のために帰れなくなったため、日本にとどまって、ビザ更新などもしなかったために、入管法違反になってしまいました。実際、大学にいる留学生とは有効なビザを持っているかどうかしか違いはなく、学生が感じた思いは全くそのとおりです。
 なお、この裁判には法廷通訳人がついていました。参加者の中には、先日の全国研究大会の模擬裁判で裁判員役をした学生もいましたが、大会の模擬裁判で法廷通訳人というものを知った直後に実際の法廷通訳人の仕事を見ることができたことに、裁判傍聴の成果を感じたようです。


これまでの活動報告


 日本法育学会からのお知らせtopics


年会費のお願い
 まだ年会費をお支払いいただいていない会員の皆様は、年会費をお支払いください。年会費の振込方法等、詳細は、入会・継続のご案内をご覧ください。

第99回研究会 社会を知る学習会 全国矯正展見学会
 集合日時:令和6年(2024年)11月23日(土) 13時
 集合場所:JR有楽町駅 国際フォーラム口改札前

第64回全国矯正展(全国刑務所作業製品展示即売会)
 会場:東京国際フォーラム(有楽町)
 日時:令和6年(2024年)11月23日(土)午前10時から午後5時
  11月24日(日)午前9時30分から午後3時

 参加に事前予約は必要ありません。また、会員でなくても参加できます。
 皆さまのご参加お待ちしております。

第100回研究会 秋の特別講演会 
 「知れば知るほど裁判員裁判」

  講演者:立石有作弁護士(埼玉弁護士会所属)
  日時:令和6年(2024年)11月30日(土) 13:00~15:00
  場所:埼玉会館 6A講堂
  内容:(1)裁判員とはどんなことをするのか
     (2)対象事件は
     (3)裁判員裁判に向けて法曹はどう準備するのか
     (4)裁判員裁判が始まるまで
     (5)裁判員の役割と期待されること
     (6)裁判員が注目すべきこと
     (7)弁護人の立場から伝えたいこと
  資料代:500円
  参加申込み:先着20名
   日本法育学会事務局に参加希望メールをお送りください。
 
 ・秋の特別講演会ポスター(PDF)


新着情報news

2024年11月10日
社会を知る学習会(全国矯正展見学会)の予定(2024年11月23日(土))を追加しました。
2024年10月27日
秋の特別講演会(2024年11月30日(土))のポスターを追加しました。
2024年10月26日
活動報告を更新しました。
2024年10月25日
理事長からの第7回全国研究大会のご報告を掲載しました。
2024年10月10日
社会を知る学習会(裁判傍聴)の予定(2024年10月25日(金))、秋の特別講演会の予定(2024年11月30日(土))を追加しました。
2024年9月22日
活動報告を更新しました。
2024年9月20日
日本法育学会第7回全国研究大会のプログラムポスターを掲載しました。
2024年9月14日
学会紹介のページを更新しました。
2024年9月6日
社会を知る学習会(裁判傍聴)の予定(2024年9月18日(水))を追加しました。
2024年8月20日
活動報告を更新しました。
2024年8月14日
活動報告を更新しました。
2024年8月6日
第7回 日本法育学会全国研究大会を、2024年10月14日(月)に、志學館大学にて開催します。詳細は決まり次第お知らせします。
2024年8月3日
鹿児島司法精神医学研究会との合同模擬裁判を、2024年10月14日(月)に、志學館大学にて開催する予定です。詳細は決まり次第お知らせします。
2024年6月3日
社会を知る学習会(明治大学博物館見学会、三淵邸(甘柑荘)見学会)の予定(2024年6月22日(土)、6月23日(日))を追加しました。
2024年5月28日
2024年5月8日(水)の社会を知る学習会(裁判傍聴)についての船山弁護士からの報告書を掲載しました。
2024年4月25日
社会を知る学習会(裁判傍聴)の予定(2024年5月8日(水))を追加しました。
2024年4月22日
活動報告を更新しました。
2024年4月5日
社会を知る学習会(日本銀行貨幣博物館見学会)の予定(2024年4月13日(土))を追加しました。
2024年3月31日
活動報告を更新しました。
2024年3月2日
社会を知る学習会(警察博物館見学会)の予定(2024年3月19日(火))を追加しました。
2024年2月4日
社会を知る学習会(裁判傍聴)(2024年2月5日(月))は、警報級大雪の予報が出ておりますため、中止とさせていただきます。直前の急な中止となりましたことをお詫び申し上げます。
2024年1月29日
社会を知る学習会(裁判傍聴)の予定(2024年2月5日(月))を追加しました。
2024年1月21日
理事長からのお知らせを更新しました。

過去のお知らせ






日本法育学会


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